【漫画】アンダーザローズ 船戸明里
美しくて愛おしくて苦しい漫画
私には漫画好きな友達が何人かいて、シーズンごとに「最近なんかいい漫画あった?」とおすすめ交換会をします。
その中でみんなが読んでいて物語の結末をドキドキしながら待っているマンガがあります。
それが船戸明里さんが描いている「アンダーザローズ」です。美しくて愛おしくて、でも胸が苦しくなる作品です。
アンダーザローズとは
通称「アンダロ」「あんだろ」
幻冬舎バーズコミックスで10巻まで刊行されています。
連載開始 ミステリービィストリート2002年12月号
掲載誌変更 スピカ vol.1(2003年10月)
掲載誌変更 Webスピカ2004年5月号
掲載誌変更 comicスピカNo.10(2012年7月)
掲載誌変更 月刊バーズ2015年6月号、7月号
と掲載誌がかなり変わっています。
そして月刊バーズの廃刊に伴い、今は休止中です。
※ハニーローズに関しては後述します
作者の船戸明里さんについて
同人誌活動を経て、1993年、隔月刊誌「電撃メガドライブ」にてデビュー。
以降、小説の挿絵、ゲームのキャラクターデザインなどを多数手掛けており、漫画とイラストレーターを兼務しているクリエイターです。
船戸さんは画力が非常に高い漫画家で、絵柄には上品さと程よい色香があります。細かな書き込みまで気を抜かないので何度も読んで楽しめます。
Twitterではゲームに関するつぶやきが多いよう。
pixivで販売している「ぺこのすけ」はアンダーザローズとは違い日本を舞台にしたコメディ。不思議かわいい作品ですが、ほんの少しヒリッとした感じはあって船戸さんらしさは健在です。
ぺこのすけ#黒髪 ぺこのすけ 第一話 - 船戸明里のマンガ - pixiv
この「ぺこのすけ」の表紙もかわいくて好き!書影を出していいかわからないのでリンクだけ
アンダーザローズの概要とあらすじ
舞台は19世紀のイギリスです。
これだけでもうワクワクだわ。ヴィクトリア朝ってなんでこんなに魅力があるんだろう。
アンドーザローズは、イギリスの地方都市であるロウランドを舞台に、ロウランド伯爵家の家族たちがくり広げる少しダークなヒューマンドラマです。
伯爵家には4人の嫡子たちがおり、そこに2人の兄弟(婚外子)が加わるところから物語は始まります。
ロウランドで不審な死を遂げた母のことや自分達のルーツについて複雑な思いを持った兄弟たちが家族に波紋を起こします。(冬の物語)
さらにのちに加わる美しい家庭教師(ガヴァネス)から見たローランドのいびつで不思議な家族の姿についても丹念に描かれます。(春の讃歌)
当時の貴族の屋敷はこんな風に成り立っていたんだなとか、使用人はこんな暮らしをしていたんだなという細かいエピソードも散りばめられていてとてもいい。
まずは、怒涛のエピソードを楽しみつつ、2回目は当時の貴族の生活を覗き見する比較文化学的な読み方をすると2度美味しいでしょう。
ちなみにロウランドの使用人はみんな名古屋弁なので、ロウランドとロンドンは名古屋と東京ぐらいの文化の違いがある土地なんだろうなと想像で勝手に補完しています。
注意点
この作品には少し注意点があります。
はっきりわかる形での性に関する加害/被害表現(それが話のメインではないけれど、ストーリーのポイントにはなっている)が出てきますので、トラウマのある方は要注意です。
物語が非常にパワフルで濃厚なので、メンタルが落ちてるなあという時に、楽しくなるために読む用途にはむきません。
また、現在休載状態なので、完結していないという点も注意が必要です。
早くその先が読みたいけど…ウズウズするなあ!
タイトル「Under the Rose」とは
最近までタイトルは単純にバラの下でという意味かなと思っていたんですが、調べてみるとunder the roseというのは英語の古語で「秘密に」「ないしょの」という言い回しなんだそう。
こんな小粋な言葉があるのか。
こういう時、英語をサボらずもっと興味を持ってやればよかったなあと思う。
すでに出ている10巻分+αのストーリーの中にも沢山の秘密がありましたが、まだ秘密はあるのだろうか。
スピンオフ作品 ハニーローズ
スピンオフという位置付けでいいのかどうかはわかりませんが、アンダーザローズにはハニーローズという後日譚があり、すでに出版されています。まずハニーローズが先に連載され、次にアンダーザローズの連載になったので制作の時系列は逆…。
アンダーザローズの登場人物たちがどうなったのかある程度見えるので面白くもありややネタバレ感もあり…ですが多分アンダーザローズにハマった人は読まずにはいられないと思います。
アンダーザローズの続刊が出たらハニーローズの世界と一本の線で繋がるのだと思う。
続刊、絶対読みたいな。
ハニーローズ→アンダーザローズという順番で読むと、いかに緻密に作り上げられた物語なのかとびっくりします。
後年のキャラクター造形の設定と本編アンダーザローズの破綻がほぼなくしっかりとしたストーリーテリングされていてやっぱりすごい。
いつまでも待つよ
アンダーザローズは掲載誌の休刊で続刊が出ていない状態です。
でも待つ!待てる!全然大丈夫。
そんなに苦痛じゃない。いいよいいよのんびり無理せず行きましょう。
なぜなら我々漫画ファンは「ガラスの仮面」のことだってずーっとずーっと待ってるわけで(たまに出るけど)、こんなのまだお預け状態のうちにも入りません。
うふふ。
いつか最終巻を読む日が来るまで楽しみに待っていようと思います!